相続税について
相続税とは、相続財産(遺産)の評価に応じて支払わなければならない税金のことです。
相続税の金額は、基本的には相続財産の評価額が大きければ大きいほど高額になりますが、相続税には基礎控除という制度がありますので、相続が発生した場合に必ず相続税を支払わなければならないというわけではありません。
実は、相続税の課税対象となる相続は全ての相続のうち約5%程度であり、非常に少ないのが現状です。なぜなら、相続財産の評価額の合計が基礎控除の額の範囲内であれば相続税を支払う必要がないからです。
もっとも、平成27年1月1日から相続税の基礎控除の計算方法について大きく変更されました。これまでは「5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数」が基礎控除の額として計算されていました。例えば、法定相続人が3人いる場合、「5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円」が基礎控除の額となりますので、相続財産の評価額がこの額より低ければ、相続税を支払う必要がないということになります。
しかし、平成27年1月1日以降に発生した相続については、基礎控除の計算方法が、以下のとおりとなりますので、今後は相続税が課税される相続が増加すると考えられています。
基礎控除額 | 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 |
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※平成28年3月現在
相続税とは、相続又は遺贈により財産を譲り受けた者が支払う税金を指します。
相続をするということは、一般的には財産を取得することが多いので、税務申告をする必要があります。
相続申告手続きは、相続開始から10ヶ月以内に完了する必要があり、さらに10ヶ月以内であれば相続税の特例を受けることもできます。
どのような財産があるのかは、個人の財産目録を作成すれば分かりますが、相続を実際に行うためには、財産がどのくらいの価値があるのかを確定しなければなりません。
通常、財産は相続開始時の時価で評価しますが、相続税の申告の際の評価額は国税庁の通達である財産評価基本通達に従うため、一般的な相場と異なった額になることもあります。評価には多くの専門知識を必要とします。専門家の力を借りたほうがいいでしょう。
農地 | |
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純農地・中間農地 | 倍率方式 = 固定資産税評価額 × 倍率 |
市街地周辺農地 | 市街地農地の80%相当で評価 |
市街地農地 | 倍率方式、または宅地比準方式 = 宅地比準額 - 宅地造成費 |
宅地 | |
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市街地にある宅地 | 路線価方式 = 「路線価 × 宅地面積」を土地の位置や形状により補正した額 |
路線価のない宅地 | 倍率方式 = 固定資産税評価額 × 所定の倍率 |
山林 | |
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純山林,中間山林 | 倍率方式 = 固定資産税評価額 × 倍率 |
市街地山林 | その山林が宅地であるとした場合の価額 - 宅地造成費 |
私道 | |
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不特定多数の者の通行に利用されている場合 | 私道の価額は評価しません |
特定の者の通行に利用されている場合 | 通常の宅地評価の30%で評価 |
耕作権 | 農地の自用地としての価額×(1-耕作権割合(50/100)) |
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永小作権 | 農地の自用地としての価額×(1-残存期間に応じる割合) ※定めがない場合は40% |
地上権 | 自用地の評価額 × 権利の残存期間に応じた割合 |
借地権 | (原則)自用地としての価額 × 借地権割合 |
上場株式 | 原則として相続開始日の終値、その月の終値の月平均額、その前月の終値の月平均額、前々月の終値の月平均額のうち、最も低い価額を評価額とします。 |
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気配相場のある株式 | 上場株式とほぼ同じです |
取引相場のない株式 | 会社の利益・配当・資産価値または相続税評価基準による純資産価額 |
普通預金・通常貯金 | 相続開始日の口座残高 |
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定期預金 | 相続開始日の残高+相続開始日に解約した場合の利子額 |
死亡退職金 | 受取金額-非課税枠(500万円×法定相続人の数) |
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定期預金 | 相続開始日の残高+相続開始日に解約した場合の利子額 |
利付公社債 | 発行価額と相場価格のいずれか低い方+既経過利子の手取額 |
割引公社債 | 課税時期の最終価格(上場公社債) または、「発行価額+既経過償還差益の額」(その他)などによって評価 |
一般動産 | 調達価額で評価 |
書画・骨董品 | 売買価額及び専門家による鑑定価額 |
貸付信託 | 元金 + 既経過収益の手取額 - 買取割引料 |
被相続人が死亡した際に取得することになる死亡保険基金に関してですが(生命保険に被相続人が加入している場合)、原則的にこの保険金も課税対象となります。
保険料を誰が負担していたのか、また、受取人が誰なのかなどで、かかってくる税金の種類が異ってきます。
死亡保険金の課税の種類 | |||
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保険料負担者 | 被保険者 | 保険金受取人 | かかる税金の種類 |
夫 | 夫(故人) | 妻 | 相続税 |
妻 | 夫(故人) | 妻 | 所得税 |
妻 | 夫(故人) | 子供 | 贈与税 |
死亡保険金の課税の種類 | |
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相続税 | |
保険料負担者 | 夫 |
被保険者 | 夫(故人) |
保険金受取人 | 妻 |
所得税 | |
保険料負担者 | 妻 |
被保険者 | 夫(故人) |
保険金受取人 | 妻 |
贈与税 | |
保険料負担者 | 妻 |
被保険者 | 夫(故人) |
保険金受取人 | 子供 |
相続税(死亡保険金) | 500万円 × 法定相続人の数 |
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所得税(総合課税の対象) | (受け取った保険金-保険料掛け金総額-50万円)×1/2 |
贈与税(贈与税対象) | 保険金 - 110万円 |
課税価格 | 「取得した相続財産」+「みなし相続財産」 -「債務・葬式費用」 + 「(1)相続時精算課税の適用を受けた贈与財産・ (2)1を除く被相続人からの3年以内の贈与財産」 |
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課税遺産総額 | 「課税総額」 -「基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)」 |
相続税の総額 | 「課税遺産総額」×「各人の法定相続割合」 ×「税率-控除額」 |
各人の相続税額 | 「相続税の総額」×「各人の課税価格」 ÷「課税価格の合計額」 |
各人の相続税納付額 | 相続税額に20%相当額を加算や税額控除の適用を各人行う |
相続問題はとてもトラブルにつながりやすく、事前の対策、準備が必要になります。
紛争防止のためには専門家が必要です。